鍼灸の作用(その2)



鍼灸の働き (鍼灸の作用機序)

 鍼は身体に刺入することで皮膚、筋肉、神経を刺激します。灸は温熱等で体表を刺激します。 これらの刺激は、身体にとっては侵害刺激になります。それらの刺激に反応して体内では様々な物質が生み出されていきます。血流動態も変化し、身体の状態も変化していきます。



 鍼灸刺激により中枢神経内に内因性オピオイド(副作用のないモルヒネのような役割をもったホルモン)が放出されます。この内因性オピオイドが痛みを抑えたり、痛みを脳に伝える神経経路をブロックしたりします。脳からと脊髄からとの2重の働きで痛みを抑制し緩和します。鍼灸が痛みの緩和を得意とするのはこの2重のメカニズムが働くからです。神経を刺激して血行を促進し、血流動態を変化させることで痛みの原因となる物質を老廃物として流してくれます。


<鍼灸を施術した部位(局所)に起こる反応>

「軸索反射」…局所の血管拡張反応…皮膚が赤くなる(発赤・フレア)
「生じる物質」
サブスタンス P (substance P:SP)
カルシトニン遺伝子関連ペプチド (calcitonin gene-related peptide:CGRP)
これらの物質により血管が拡張する


<脊髄で起こる反応>

「ゲートコントロールセオリー」…脊髄後角に痛み信号の流入をコントロールする「ゲート」(=門)の機能があるという学説。この「ゲート」により痛みの伝達経路をふさぐことができる。
 複数の刺激が同時に発生した場合、感覚を脳に伝える通り道である脊髄は、太い神経からの信号を優先的に受け取り、後からくる細い神経からの信号に対しては「ゲート」を閉ざして受け取らないという考え方です。
痛いところをさすると痛みがましになるということは私たちが日常的に経験していることです。


<脳の中で起こる反応>

「オピオイド受容体を介する鎮痛」
「下行性疼痛抑制系による鎮痛」
「広汎侵害抑制調節(diffuse noxious inhibitory controls:DNIC)による鎮痛」